売主と買主の条件がまとまった後は、通常物件担当会社にて、重要事項説明書並びに売買契約書の読み合わせ・署名捺印を行います。契約は既にまとまっていることを再確認するための場なので基本的には難しいことはありませんが、スムーズな契約のためには取り仕切る人が上手く回さなければなりません。話さなければならないことを話し、質問させ、余計なことを話させないよう、話を脱線させて時間が長くならないようにしなければなりません。
1.重要事項説明書:契約前に、契約者に対して対象不動産の重要な事項を宅地建物取引主任者が説明しなければなりません。契約時に行うことが多いですが、契約前であれば何日前でも構いません。特に細かいお客様には契約日前に重要事項説明をしておきましょう。下手をすると契約日の延期等になりかねません。
2.売買契約書:契約条件の確認、契約条項の読み合わせを行います。※最初のうちは条文を呼んでも意味が頭に入ってこないため、お客様の質問に答えられない場合もあります。契約書の条文は予め素読をして慣れておきましょう。
3.設備表:物件に付属する設備について、売主から申告してもらったものを説明します。主要な設備については1週間の瑕疵担保責任があります。
【瑕疵が多い設備の例】
・水道や洗面設備の蛇口に漏水がある
・インターホンの故障
・シャワーヘッドの漏水
・給湯器の寿命(10年程度)
・・・この内容はマニュアルに記載されております。・・・
4.物件状況等報告書:物件の状況について、売主から申告してもらったものを説明します。シロアリ・雨漏り・給排水管の故障については3ヶ月の瑕疵担保責任があります。
5.署名・捺印:これまでに説明した書類に署名押印してもらいます。まずは署名だけを先に全て済ませて、その後、押印をしてもらうようにしましょう。
6.手付金の授受※お客様の中には手付金を確認するのに時間がかかる方もいます。書類を整理している間に手付金を確認してもらうようにしましょう。
7.書類整理
①媒介契約書※買主が業者の場合は、売主から一般未登録の媒介契約書をもらいます。
②手数料承諾書
③手付金の領収証
④契約印紙の貼付・仲介手数料領収証の交付
⑤付属書類:重要事項説明書の説明に用いた書類をお渡しします。
8.本人確認
①免許証:本人確認の為に必要となります。稀に免許証を渡したくないという方がいますが、番号を消してもらった免許証のコピーをもらうようにしましょう。
②権利証:登記名義人であっても既に権利譲渡済みや権利証を紛失しているかもしれません、権利証があるか確認しましょう。権利証を紛失している場合は、別途費用(10万円程度)が必要となります。
③印鑑証明書:権利移転時に必要となる実印ならびに実印を確認するための印鑑証明書を売主に用意してもらいましょう。
④代表者事項証明書もしくは会社謄本、担当者の運転免許証
9.特殊契約
①代理契約:ご主人様の都合が付かないが、奥様に契約手続きをしていただけるような場合は、委任状による代理契約をしましょう。
②持ち回り契約:契約当事者のどちらかが遠方にいたりする場合に不動産仲介会社が契約書類等一式を持って署名捺印をもらいに動きます。行います。例えば買主から先に売買契約書等に署名捺印をもらい、その後に売主のところへ行って署名捺印を貰うという方法です。
③片側契約:売主と買主の契約日の調整がつかなくて長引いてしまうようなら別々に契約を行いましょう。例えば午前中に売主から署名捺印をもらい、午後に買主から署名捺印をもらいます。
10.書類訂正方法:契約前に良く確認した書類でも誤字・脱字が見つかる場合もあります。
①重要事項説明書:・・・この内容はマニュアルに記載されております。・・・
②上記以外の書類:・・・この内容はマニュアルに記載されております。・・・
11.業者契約:業者が売主もしくは買主の場合、業者の中には社判を持ち出しできないため、事前に書類の送付が必要な場合や、面倒な特約が必要となったりするので注意が必要です。
12.分かれ契約:他業者と分かれ契約をする場合には、基本的には書類の作成は物件担当会社になりますが、会社規模によっては大きい会社の方が書類を作成する場合があります。また、契約書チェック部署があるような会社が相手方の場合には、重要事項説明書の内容に細かな指摘が入る場合があります。営業担当としてはどうでも良い指摘がほとんどなのですが、契約書をチェックする部署は暇な人達で構成されているのでどうでも良いことにエネルギーを費やすことと、お願いされる立場にいるので上から目線になりがちです。また、会社でこうと決めたことは基本的に覆せないのです。
13.注意事項
①・・・この内容はマニュアルに記載されております。・・・
②業者物件に客付けする場合、販売価格には消費税額が含まれています。仲介手数料の計算をするときは、消費税額を除いた額で計算しなければなりません。
③瑕疵の修復範囲:基本的には瑕疵のあった設備については、新品に交換という形ではなく、補修することが基本となります。補修内容は、シーリング剤の充填や配管・継手部分の補修、インターホンの基盤交換、給湯器の着火器具交換等になります。
④免責事項:消耗品の不具合については免責となります。多いのは水道の蛇口のパッキンの磨耗による水漏れです。蛇口交換には数万円必要な場合がありますので契約時に説明しておきましょう。また、クロス・網戸等には破れ・ほつれ・汚れ等があることも事前に伝えておきましょう。
⑤契約時間:慣れてくると、重説30分、契約書30分、設備表・物件状況等報告書30分、署名捺印・金員計算30分の合計2時間で終わらせることができます。慣れていないと逐条で説明してしまい、客が内容を理解できないことから質問が多くなってしまい、結果として3時間以上かかってしまうことがあります。
⑥売主の中には、購入する買客の気持ちを考えずに、物件への不満を漏らすことがあります。また、契約中に離席した隙に売主と買主が話をすることで、これまで仲介会社が話していた内容とつじつまが合わない事態になってしまうこともあります。そんな話は聞いていなかったと後でクレームにならないよう注意しましょう。
⑦物件の細かな事や悪いところ(重大なことを除く)は契約中に売主に質問して話させるほうが買主に対して効果的です。また、リフォーム内見のお願いや引渡しを前倒しにしたい等のお願いも契約中にしてしまいましょう。
⑧契約をまとめるために、他の人が既に申し込んでいる等事実と違うことを買主に対して説明してしまうこともあります。売主にはそのような話が出ても上手く対応してくれるように話しておかなければなりません。
⑨重要事項説明は売主にとってはあまり意味のない説明になります。その為、あえて売主に買主より遅めの時間にきてもらい、余計な時間を省くことができます。これにより売主と買主が余計な話をするということを防ぐこともできます。
⑩交渉の過程で、売主と買主との印象が互いに良くないまま契約をするということもあります。そのような場合はあえて持ち回り契約をすることで余計なトラブルを回避することもできます。