中古不動産(特に戸建)の仲介を行っていると、最近お客様からホームインスペクション(建物診断)の実施を求められることが増えてきた。確かに、不動産取引に際しては瑕疵担保責任が売主に課せられるし、表装だけではわからない瑕疵が潜んでいるかも知れないと思うと、本当にこの不動産を購入して大丈夫なのか、後で問題が出てくるのではないか、中の状態はとんでもないことになっているのではないか心配される気持ちもわからないではない。そのため、専門家に建物の状態を見てもらおうというのだ。
ところが、その専門家も建物の基礎・柱・木材・屋根・外壁等の耐久性まで測定できるわけではない。屋根裏に上って雨染みの有無で雨漏りの可能性を推測したり、基礎のクラックの有無を調べて耐久性に問題がないか推測したり、外壁のコーキングの劣化度合いを見て雨漏りの可能性を推測したり、床下を点検口から潜ってみて土台が腐っていないか、水漏れの跡がないか調べて給排水管の故障の有無を推測したりしているのだ。
つまり、構造上や木材の耐久性の問題まで調べることができるのではなく、建物をつぶさに注視することで建物が発している不具合のサインを発見できるかどうかを調べているのだ。これはある程度の経験を積んだ不動産営業マンや実際に住んでいる売主に細かくヒアリングすればわかってしまうものでもある。不具合のある建物はどこかになんらかのサインを出しているものだ。言い換えると原因不明の問題(カビや建具のゆがみ)が生じている建物はどこかに問題があることになる。そのサインを漫然と見過ごさずきちんと原因を確認できるかどうかの違いなのだ。
不動産営業マンや売主が不具合のサインを見つけられない建物にホームインスペクションや建物診断を実施しても経験上9.9割は問題ないと診断される。ただ、安心をお金で買うことができるとしたら安い買い物なのかもしれない。費用も10万円以内が目安となる。